「カラリオ」の高画質をプリンター本体とともに支えるインクカートリッジ。それは単にインクを供給するだけのものではなく、プリンターの最高性能を引き 出すためにプリンターとともに活躍するもう一人の主人公である。ICチップの搭載や各色独立パッケージ化などの技術は前回に紹介したが、ユニークさはそれ だけにとどまらない。


インクの流れを正確に感知
《インクカートリッジもさらに進化》


Smart Valveの働きにより、インクはヘッドに供給される
 「カラリオ」のインクカートリッジに搭載されている独自の「Smart Valve Control」技術。ピエゾヘッド方式と切っても切れないこの技術は、インクやプリンターが高画質化を目指して進化するなかで、インクカートリッジにお ける進化の形である。

 フォーム式カートリッジは、カートリッジ内にスポンジ状のものを置き、それにインクを染み込ませて保持するタイプである。

 フォームは何種類かの薬品を用いて化学反応により発泡・爆発させ、インクの通り道(インク流路)を作るという処理をしている。しかし 顔料インクでは、比 重の重い顔料粒子が下に溜まると、フォームの中ではインクが動き難いので、そのまま維持されてカートリッジの上部と下部で濃度差が出てしまい、印刷したと き色合いが異なってしまう。加えて印刷スピードの高速化に伴う多ヘッド化に対しても、フォーム式では内部の細かなインク流路の壁が抵抗になって、顔料粒子 がスムーズに流れず、インクの供給が間に合わない。


《電気を使わずバルブを開閉-Smart Valve Control》

 こうした点を克服するために開発されたのが、バルブによってヘッドに必要な量のインクを供給するバルブ技術「Smart Valve Control」を採用したインクカートリッジだ。

 フォーム式では、フォームがインクを吸収しようとする特性を利用してヘッドへの液ダレを防いでいるが、Smart Valve Controlではインク室とヘッドとの連結室の間にバルブを設けてインクの通り道を塞ぐことで液ダレを防いでいる。

 そして印刷時には、ヘッドから吐出された分のインクを補おうとしてかかるわずかな圧力を感知してバルブが開き、補充されるとバルブが 閉まるようにしてい る。また、バルブの設置だけでなく、バルブの開閉をサポートするコイル状のばねを採用してインクの圧力バランスを安定に保つことで、プリンターが作動して いない時の密閉性を高めている。

フォーム式では顔料粒子が下に溜まるとそのまま維持され てしまう  エプソンのカートリッジは、液体のまま保持するので顔料 粒子が均一化している

 顔料インクを液体のまま保存し、いかにヘッドが必要とするだけの量のインクをスピーディーに正確に供給できるか。インクカートリッジ に必要とされるもっ とも重要な本来の役割を追求した結果こそ、Smart Valve Control採用のインクカートリッジにほかならない。

 




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